これも生まれつき持っている袋の病気です。正中頸嚢胞や、側頸嚢胞と異なり、1つの袋状ではなく、内部に壁を伴った、2つ以上の袋が集まったような形をしていることもよくあります。内部にはリンパ液がたまっています。
これも胎生期に、リンパ管という管が作られる時の「神様のいたずら」でリンパ管が膨れたり、小さいリンパ管が集まって、袋のような柔らかい腫瘤をつくります。
上記2つに比べ柔らかく、下を向いたり、頭を低くして横になると膨らみが強くなることがあります。症状は無いことが多いのですが、感染すると痛みを伴います。
また体中のいろいろな場所にできますが、特にくびにできたものは大きくなると気管を圧迫し、呼吸がしにくくなり危険なことがあります。このような場合は手術で摘出することになります。ただし、通常の嚢胞性の病気と違い、形がいびつなことも多く完全摘出がなかなか難しいこともあります。
そこで緊急性のないものや小さいものは、手術でなく、OK432注入療法を行うことが増えてきています。これはピシバニール(OK432)というお薬を超音波で腫瘤を確認しながら中に注入する方法です。このお薬は袋の中で炎症を起こし組織を変化させて、液が溜まってくるのを抑えると言われています。がま腫という口の中や、首にできる唾液管由来の袋でもこの治療を行います。
この方法は簡便ですが、大きい腫瘤は小さくするのが難しいことがあります。
外来でできる処置ですが、小さいお子さんの場合は、全身麻酔で行うこともあります。
また気管のそばの腫瘤に対して行うと、処置後に周囲が炎症で腫れ上がり、呼吸が苦しくなることがあります。そこで腫瘤のある場所によっては1日程度の経過観察の入院が勧められます。
がま腫とは、顎下腺や舌下腺という口の底の奥にある唾液腺や、唾液腺から口へ続く唾液管が何らかの刺激で損傷をうけたり、管が(石などで)詰まったりしたことで、そこから唾液が外に漏れ、やがてその周囲に膜ができ袋状になったものです。実際取り出すと、うすい膜でおおわれた半透明の袋をしています。中には唾液が溜まっています。
別の記事もありますので、ご参照ください。(がま腫)
通常口の中の底、舌の付け根にできます。口を開けたときに見ることができます。ときには、口の底の筋肉のすき間から、顎の下方にはみ出るような形でできることがあります。こういうケースでは、一見正中頸嚢胞のような、顎の下に袋がみられることがあります。
写真は、口の中の底と顎の下の両方に連続するがま腫がみられた大人の方です。
血管腫という血管が母体となった良性の腫瘍なども時々見られます。また脂肪腫という脂肪の塊なども見られます。
柔らかい液がたまったような腫瘤は良性の病気で腫瘍より嚢胞(袋)のことが多いのですが、まれに悪性腫瘍のこともあります。
注射器で刺してみると、透明な液が吸引され、一見良性の嚢腫のように思われても、細胞診(液の細胞を調べる)を行うと、悪性とわかることもあります。
このように、袋状の腫瘤であっても、悪性の腫瘍のこともあります。必ず、専門医の診察を受けられることをお勧めいたします。