穴を開けるときのトラブルより、使用中のピアスのトラブルの方が多いかもしれません。
金属アレルギーの体質であることを知らずに、ピアスをつける方もおられます。汗をかいたりすると、金属の一部が溶出することもあり、また接触性のアレルギーにより皮膚症状がおこることがあります。もともと金属アレルギー体質の方もおられますし、ピアスを付けて初めて金属アレルギーを生じる(「感作される」ともいいます)方もおられます。
金、銀、チタン、プラチナ、ステンレスなどは、比較的金属アレルギーが少ないと言われますが、合金であったり、メッキ加工したものであると、混合物や、メッキが剥げた下の金属に、アレルギー反応を起こすことがあります。皮膚表面が赤くなったり、痛みが出ます。
この方は、両側に2個づつピアスをつけておられました。耳が痛痒くなり、ジクジクしてきたため受診されました。ピアス孔の周りが、両側とも赤くただれています。一部黄色い浸出液もみられます。感染と違い、両側また2個の穴とも、周囲に炎症を起こしていることから、金属アレルギーを生じていたものと思われました。
こういう方は、ピアスをしないほうがいいのかもしれません。しかし、使い続けたい場合は材質の変更(できるだけ純度の高いもの)や、金属以外のピアス(例えば耳に通す部分がセラミックで出来ているものなど)にされる方がいいかと思います。
また、ピアスを身体の中の細胞が異物と認識した場合、それを押し出そうという反応(異物反応)がおこることがあります。
特に大きなピアスで起こりやすいようです。もちろんピアスを押し出すことはできないのですが、持続的な炎症反応で、ピアス穴の周りに肉芽(にくげ)がわくこともあります。
この方は男性の方ですが、ピアス穴から耳たぶの後ろの方に大きな肉芽ができています。最初小さかった肉芽が、ピアスを取ったあとも大きくなっていったものと思われます。
このような場合、局所麻酔下に肉芽を切除します。
傷のついたピアスや、変形したものをそのまま使ったり、汚い手でピアス操作をしたりすると、細菌が入り感染を起こします。ピアス穴を開けた直後同様、赤く腫れたり、固いしこりが出来たり、汚い膿が出てくることもあります。後遺症として、ピアス穴周囲が醜くなったり、耳の変形を起こすこともあります。
ピアスからの感染を起こした例です。上の方の耳たぶの軟骨まで炎症が広がっており、耳介軟骨炎という状態になっています。
耳介軟骨は炎症が悪化しやすく、また骨と違い、炎症で壊死(腐ってしまうこと)を起こすこともあります。耳の形を変形させてしまう事があり、注意が必要です
ピアスはおしゃれとして、女性や今では男性にも多く使用されています。しかし変化があったときは、早めに皮膚科や形成外科、耳鼻咽喉科への受診をおすすめします。