メニエール病の治療には、治療ガイドラインというものがあります。基本はお薬を使った治療になります。お薬でのコントロールが効かなければ、外科的治療を含め、患者さんへの負担がより強い治療をおすすめすることもあります。
一般的なめまいの治療薬を用います。点滴や、眩暈を抑えるくすり、安定剤、吐き気止めなどですが、他に2つ特別な薬を使います。
1つは、イソバイドやダイアモックスなどの浸透圧利尿剤です。イソバイドは液体の薬(ゼリータイプもあります)ですが、味が今一つで、若干飲みにくいお薬です。
1回30-40mLを1日3回服用します。眩暈の発作状態、聴力の状態を見ながら、寮は調整します。
ダイアモックスは、手足のしびれや、尿管結石など、イソバイドより若干、強い副作用があります。
もう一つは、ステロイドホルモンです。眩暈の急性期や、聴力の異常が強い場合に用います。ご承知のように、これも副作用が問題となりますので、徐々に減量していきます。
その他、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)等の漢方薬も用いられます。
メニエール病は眩暈を繰り返します。一旦収まっても、発作が起こるのを抑えるため、予防的にイソバイドを使用します。
メニエール病は、発作時の治療も大切ですが、起こっていないとき、如何に次の発作を予防することが大切です。
そのため、自己判断で薬を中断することなく、診察を受けながら、減量を行っていくのが良いと思います。
1. 鼓膜チューブ留置術
鼓膜に中部を留置するという方法があります。通常、滲出性中耳炎や、反復性中耳炎で行う治療ですが、これを敢えて、正常な鼓膜に対して行います。
中耳腔(鼓膜の奥の小さな空間)の圧が低下(陰圧化)していることが、その奥の内耳、特に、メニエール病に関係する内リンパ腔に影響を与えているという理論に基づきます。チューブを介し、中耳腔圧の正常化を図ります。
2. 中耳加圧療法
1日3分間X2回、中耳加圧装置を用い、中耳、内耳に圧をかける治療です。保険認可されてまだ間もない治療です。器械は貸し出しで使用し、通院しながらその効果をみて、使用の継続を決めていきます。まだ、器械の取り扱いができる医療機関が少ないのが欠点です。
3. 手術
これらの治療が効果なく、長期間、日常生活や仕事に影響が出る場合、手術をおすすめすることもあります。
手術は、内耳の内リンパ液を外に逃がすための交通路を作る手術(内リンパ嚢開放術)や、前庭神経(眩暈に関連する神経)切断術などが行われます。内リンパ嚢開放術がよく行われています。
めまい発作の抑制効果は、内リンパ嚢開放術で70%、前庭神経切断術で90%前後と言われてます。しかし聴力や耳鳴といった、内耳の症状の改善は低く、手術の合併症で、聴力が逆に低下したり、顔面神経などの合併症が起こることもあります。
内リンパ嚢開放術でも、交通路が再度詰まってしまい、数年後にまためまい発作を起こすことも知られています。
手術ができる施設も限られているため、メリット、デメリットを理解され、手術の適応を決められることをおすすめします。
4. ゲンタマイシン鼓室内投与
ゲンタマイシンという、アミノグリコシド系の抗生剤を、中耳腔(鼓室)内に注入する方法です。直接注入したり、鼓膜チューブを挿入し、チューブ経由で入れることもあります。
ゲンタマイシンは、内耳毒性がある薬で、特に眩暈に関連する前庭系に働くと言われています。ただし、聴力に対してもある程度の作用があり、聴力低下が副作用として現れることがあります。注入時の刺激でめまいが起きることもあります。
手術効果がない患者さんや、持病のため、あるいは手術を受けたくない方に対して行います。