繰り返す滲出性中耳炎では、鼓膜切開のあと直径1mm強のチューブを鼓膜にいれる小手術をします。小学生位からは外来で鼓膜切開のあとそのままいれることができますが、小さい子の場合は全身麻酔で行います。ただ子供さんによっては、3歳位の子でも外来で挿入できることもあります。
チューブにはいろいろな形の物があります。入れやすいけれど抜けやすい、短期間留置型(左側のタイプなど)、逆に入れるのにちょっと手間がかかるものの、長期間入れておける長期間留置型(右側のTチューブなど)があります。
チューブの効果は、耳管閉塞によって障害されている次の2つの機能を改善します。
1. 中耳腔にたまった滲出液を外に出す
鼓膜切開と同じように中に溜まった液を外に出します。鼓膜切開を繰り返すより患者さんの負担が減ります
2. 中耳腔の陰圧状態を正常にします
チューブ を介して空気が入ってくることで、中耳腔の圧が正常になります。滲出性中耳炎の原因である、中耳腔の陰圧が周りから液を引き込む原因ですから、治療につながります。短期間しか鼓膜の穴が保てない鼓膜切開にはない利点です。
1歳11か月の反復性中耳炎のお子さんにチューブを入れたあとの状態です。チューブを介して、鼓膜の奥の浸出液が排泄されています。
チューブを入れたあと、いくつかの問題を起こすことがあります。
1.入れた直後の違和感、痛み
チューブが周りにあたって痛みや違和感を感じることがあります
2.一時的な聴力低下
鼓膜を切開して、チューブを入れます。やや大きい目に切開を加えることもあり、一時的に聞こえが悪くなることがあります。鼓膜の穴が2mm以下では、聴力に影響はないという説もあります。チューブのサイズはそれ以下ですので、鼓膜の穴がチューブにそって塞がれば聴力には影響は出ません。
3.予想より早くチューブが抜けてしまうことがあります
チューブ廃物ですから、鼓膜から押し出そうとする力が働きます。挿入後、数ヶ月しか立たないのに抜けてしまうことがあります。その場合は入れなおしになります。
4.チューブを抜いた後、穴がふさがらない
1年半ほどたって、チューブを空いた後、その後の穴がふさがらないということがあります。この場合鼓膜閉鎖術という手術をまた行う必要があります。
この方も右側にチューブを入れていたのですが、抜いた後がふさがらず穴になってしまっています。
鼓膜チューブ挿入の実際
下のビデオは小さいお子さんで、右側のお耳にT字型の チューブを入れているところです。全身麻酔下にしていますので、寝た状態で行っています。(画面左が頭側になります)
原因となる鼻炎やアデノイドの肥大が改善するまででしょうが、通常1年から1年半いれておきます。
ただ途中で自然に押し出されて抜けてしまうこともあります。早い人は数ヶ月でが取れてしまうこともあります。その場合、もう一度入れ直しということになります。チューブの形も短期間型から長期間留置型までいろいろありますから、変えて入れなおしたりします