小さい子の耳掃除は大変です。なかなかじっとしてくれませんから手早く綿棒でやらなくてはなりません。
でもどんなに注意していても、ちょっとした気の緩みでけがをさせてしてしまうこともあります。
この子は1歳半です。お母さんが綿棒で、左耳のお掃除をされていました。ところが急に左に子供さんが振り向いてしまい、その後から左耳から出血してきたとのことで来院されました。幸い鼓膜の手前の皮膚が傷ついて出血しているだけで、鼓膜自体には損傷はありませんでした。
でも時にはこんなことで鼓膜に穴が開いてしまうこともあります。
外傷性鼓膜穿孔もご覧いただけると幸いです。
耳垢は外耳道の皮膚が古くなって入れ替わるときの残骸や、空気中のホコリやゴミが元となって出来ます。どんなにきれいにしていても新陳代謝がおこる以上、必ず耳垢は溜まってきます。
耳垢は柔らかいベタベタしたもの(いわゆるじゅる耳とかベタ耳とかいいますね)か乾燥しているかのどちらかです。ちなみに耳垢がベタベタしているか乾いているかは、健康には全く関係ありません。
遺伝性があるといわれ、また人種によっても差があるとされています。皮膚の分泌腺の数や分泌液の粘度の違いなどが関係していると考えられます。あるいは環境(空気のきれいなところと大都会)にもよります。ですから、じゅる耳だからといって全然心配する必要はありません。
が、じゅる耳、ベタ耳のほうがとうぜんお掃除もしにくいです。綿棒でとってもどうしても取りにくいこともありますし、下手をすると奥の方へ押し込んで鼓膜に蓋をしてしまうこともあります。(前のページ参照)
決まった答えを言うのは難しいと思いますが、耳垢は生理現象として必ずたまります。その一方で耳垢が自然と耳の外にこぼれ落ちてくることもあると言われます。耳そうじ不要論をいう方もおられるくらいです。
でも実際は、じゅる耳のような湿った耳垢や、耳の中の壁にこびりついて出てこない耳垢もあります。やはり適度のお掃除は必要かと思います。目安としては1ヶ月に1回位でいいのではないでしょうか。
簡単に言うと乾いた耳垢には耳かき棒、湿った耳垢には綿棒がいいかと思います。皮膚の弱い赤ちゃんや子供さんには耳かきより綿棒が適しています。
耳かき棒は壁にこびりついた耳垢も綺麗に取ることができますが、力の入れ具合によって、皮膚を傷つけてしまいます。(前ページのように)また湿った耳垢を耳かきで取るのはかなり難しいのです。
綿棒はいろいろな太さ(大人用と子供用)やいろいろな形(ストレートなものだけでなくでこぼこしたもの)、表面に粘着性の薬剤がついており耳垢をくっつけやすくしているものなど、種々売っています。
耳の穴に対して大きすぎる綿棒では、耳垢を奥まで押し込んでしまうだけということもあります。また湿った耳垢は綿棒でも取りにくいことがあります。
湿った耳垢や、硬くなった耳垢は、オリーブオイルを少量綿棒につけてお掃除されると、取りやすくなることもあります。