固定のため、反対側の歯に固定するためのリンガルバーという、長い金属の足の部分があるタイプは厄介です。
下の方に落ちると、長い足が、食道上部まで入り込んでしまい、取り出すことが難しい状態になります。爪の部分が、周囲の粘膜にくい込み、摘出をますます難しくします。
全身麻酔をかけ、直達鏡という硬い筒を喉に入れ、粘膜に穴を開けないように、鉗子で丁寧につかんで摘出します。
下のような、固定するための長い足を持った義歯は、縦向きに飲み込んでしまうことが多いのです。爪の部分が、粘膜に食い込み、摘出するのがかなり困難になります。
口内からどうしても取れない場合は、外切開、つまり手術で摘出します。
頸部の皮膚を切開し、咽頭や食道の粘膜を切開し、外側から摘出します。手術の後はしばらく食事が出来ないため、鼻からチューブを入れて栄養を取ります。
上のものに似ていますが、足の部分がかなり曲がっており、粘膜への食い込みが強く、口腔からの摘出は困難でした。
そのため、外切開を行い、食道の上の方の粘膜に切開を入れて摘出しました。
入れ歯の誤嚥は、このように場合によっては、大変面倒なことになります。また、咽頭や食道を傷つけると、そこから感染を生じ、縦隔膿瘍という、命にかかわる感染症を起こすこともあります。
義歯の誤嚥を重症化させる要素として、クリスプやリンガルバーなど、金属の突起部分の存在が考えられます。特に、固定のための長い足を持った構造の義歯は、取り出すのに苦労させられます。最近、こうした金属の爪や足を使わずに固定する部分入れ歯(ノンクリスプデンチャーなど)があります。見た目の審美性が高いことも利点です。
保険診療の範囲ではない(保険外診療)ため、誰にでもお勧めすることはできませんが、ご高齢の方に対しては、誤嚥リスクも考え、検討してみられるのもいいかもしれません。